研究概要 |
近年,3塩基対繰返し配列の伸長という動的突然変異が見いだされ,約10種の神経筋疾患がトリプレットリピート病として概念化された.現在,遺伝性疾患の新しい病因論として,リピートの伸長機構の解明が緊急の課題になっている.本研究は,ゲノムクロマチンにおけるトリプレットリピートの構造とその動態を明らかにして,リピートの伸長機構を解明することを目的としている.本研究の特色は,正確にポジショニングしたヌクレオソームを有する出芽酵母ミニ染色体をベクターとして,DNAの構造とヌクレオソーム形成との関係をin vivoで評価できる優れたアッセイ系にある(M.Shimizu et al.,論文投稿中).まず,筋緊張性ジストロフィーと脆弱X症候群で見られる(CTG)_nと(CGG)_n(_n=12-80)を,ヌクレオソームの中央部位またはヌクレオソームフリー領域にクローニングした.これらのプラスミドを出芽酵母に導入することによって,in vivoでクロマチンにアセンブリーして,(CTG)_<12>と(CCG)_<12>のクロマチン構造を解析した.(LTG)_<12>はヌクレオソームフリー領域にヌクレオリーム形成を引き起こしたが,(CCG)_<12>ではその近傍のヌクレオソームを不安定化することが,in vivoにおいて示された(第22回日本分子生物学会にて発表).現在,(CTG)_nの長さとクロマチンの構造変化との関係について調べている.また,Friedrih失調症に見られる(GAA)_nのクローニングも進めている.さらに,単離核に対してケミカルプローブ(塩基特異的修飾試薬)を適用して,in vivoでDNAの高次構造を解析する方法の確立に取り組んでいる.一方では,トリプレットリピートをCYC1-lacZレポーター遺伝子に挿入して,非翻訳領域に存在するリピートが遺伝子発現に及ぼす影響について評価する系も構築している.
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