本研究の目的は神経細胞においてCa^<2+>がその生存にどのように関わっているかを明らかにすることである。いくつかのCa^<2+>流入経路のうち、グルタミン酸受容体を介するCa^<2+>の生存への役割を調べた。イオンチャネル型グルタミン酸受容体のサブタイプの一つであるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体はカルシウムイオンを細胞内に流入させる特徴を持つ。 ラットの大脳皮質培養細胞を用い、NMDA受容体アンタゴニストおよびエタノールの影響について調べた。NMDA受容体アンタゴニスト(MK801、ifenprodil)およびエタノール処理により細胞内カルシウムイオンが減少した。24〜48時間後には細胞体の萎縮が観察され、さらに、核の凝集・断片化、DNAの断片化が認められた。この細胞毒性は、アゴニストであるNMDAにより抑制された。また、caspase-3の活性化を伴い、さらにcaspase-3阻害剤によって、細胞毒性は抑制された。タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドによっても、この細胞毒性およびcaspase-3の活性化は抑制された。この細胞にはRT-PCRおよびウエスタンブロット法により、少なくともNR1、NR2A、NR2Bサブユニットが発現していることが確認された。NR2Bに選択的antagonistのifenprodilと非選択的なMK801によるアポトーシス細胞数の比較から、シナプス形成期には、NR1/NR2B受容体が大脳皮質細胞の生存維持に関わっていることが示唆された。また、IGF-IやBDNFの神経栄養因子はphospatidylinositol3-kinaseを介して、アポトーシスを抑制していることが示唆された。IGF-IやBDNFはカルシウムイオン流入に影響を与えなかったので、その下流で働いていると考えられる。
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