研究概要 |
痴呆関連ペプチドによる痴呆モデル動物作製に関する研究の一環として内在性μ-オピオイド受容体作動薬endomorphins(endomorphin-1および2)に着目し,それらの短期および長期記憶に及ぼす作用を,それぞれ自発的交替行動および受動的回避学習を指標にして検討した. 1)自発的交替行動に及ぼす作用 Endomorphin-1(10および17.5μg)およびendomorphin-2(10μg)は,自発的交替行動を有意に低下させた.Endomorphin-1(10μg)およびendomorphin-2(10μg)による自発的交替行動の有意な低下はμ-オピオイド受容体拮抗薬β-funaltrexamine(5μg)の併用により有意に抑制されたが,δ-オピオイド受容体拮抗薬naltrindole(4ng)あるいはκ-オピオイド受容体拮抗薬nor-binaltorphimine(4μg)を併用しても影響されなかった. 2)受動的回避学習に及ぼす作用 Endomorphin-1(10および17.5μg)およびendomorphin-2(17.5μg)は,受動的回避学習を有意に障害させた.β-Funaltrexamine(5μg)は,endomorphin-1(17.5μg)およびendomorphin-2(17.5μg)による受動的回避学習障害を有意に抑制したが,naltrindole(4ng)あるいはnor-binaltorphimine(4μg)は無効であった. 以上の結果より,endomorphinsはμ-オピオイド受容体を介して短期および長期記憶を障害させることが示唆された.
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