著者らはラット胃潰瘍部からの抽出液やカゼイン注入後の腹水に高分子量の好中球ケモカインが存在することを認め、その精製を行った。好中球遊走刺激活性はSDSゲル電気泳動上の約40kDaのバンドと挙動が一致した。本蛋白質の構造解明のために、この40kDa蛋白質のラージスケールでの精製を試みた。ところが、アミノ酸配列の解析に適用できる十分な蛋白質量が得られなかったので、その一部を質量分析にかけたところ、α1-アンチトリプシンに類似した蛋白質であった。そこで、市販のα1-アンチトリプシンの好中球遊走刺激活性を検討したが、明らかな活性は認められなかった。従って、高分子量ケモカイン様蛋白質はα1-アンチトリプシンとは異なるものであると考えられた。現在、一次構造の解明のために、再度この蛋白質を大量精製することを進めている。一方、高度に精製した高分子量ケモカイン様蛋白質の活性をin vitroおよびin vivoにおいてをラットの低分子量ケモカインであるcytokine-induced neutrophil chemoattractant(ClNC)-1と比較検討した。in vitroのケモタキシスチャンバーでの好中球遊走に対して、高分子量ケモカイン様蛋白質は用量依存的な促進作用を示した。また、ラットの背部に皮下注射し、in vivoで好中球遊走刺激活性がみられるか否かについて検討した。その結果、背部皮下に好中球の浸潤が観察された。いずれの作用もClNC-1に比較すると弱いものであったが、高分子量ケモカイン様蛋白質は確かに好中球の遊走・浸潤を誘起することが判明した。
|