難治性アレルギー疾患の遷延化機構への好酸球浸潤の関与を明らかにする目的で、アレルギー性鼻炎モデル及びラット腹腔肥満細胞を用いて実験を行い、以下の結果を得た。 感作肥満細胞に抗原刺激を行うと、MIP-1α、IL-6、MCP-1のmRNAの経時的発現が観察された。MIP-1αおよびIL-6mRNAの発現は、カタラーゼの共存により減弱した。過酸化水素を単独で作用させた際にも同様のmRNAの発現が観察された。モルモット鼻粘膜にhistamineを点鼻すると、24時間後に最大となる好酸球浸潤が観察された。この好酸球浸潤の時間経過は、抗原-抗体反応によるものと同様であった。またこの浸潤は、histamine H1拮抗薬エバスチンの前処置により抑制された。このことから、好酸球浸潤に即時相で関与しているhistamineが関与している可能性が示唆された。次に、Wistar系雄性ラットを用い、BNラットにOvalbuminで能動感作することにより得られた抗血清を点鼻し、受動感作を行った。感作6時間後、抗原を2分間吸入させ、その後1時間、3時間、6時間、12時間放置したのち断頭し、鼻粘膜を採取し、採取した組織からmRNAを精製し、ケモカインであるMIP-1α、Eotaxin、RANTES、MCP-1のprimerを用いてRT-PCR法を行い、各々のmRNAの発現変化を検討した。その結果、MIP-1αのmRNAは無感作、感作とも発現が認められなかったが、EotaxinのmRNAは無感作時から発現し、感作により発現が増強した。RANTES、MCP-1のmRNAは、感作による変化はなく、恒常的に発現していた。感作動物に抗原刺激を行うと、MIP-1αのmRNAは抗原刺激1時間で強い発現が認められ、3時間、6時間と時間経過に従って弱くなり、12時間後に再び1時間後と同様の発現が観察された。しかし、EotaxinのmRNAは、抗原刺激による時間変化は認められなかった。受動感作ラット鼻腔内を加温した生理食塩水で灌流した際に得られた灌流液に回収されたリンパ球を分類すると、抗原刺激によりCD3陽性の細胞、すなわちTリンパ球が有意に増加していることが明らかになった。さらに分類すると、このTリンパ球はCD4陰性でγδTCR陰性であることが明らかになった。
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