出芽酵母ゲノムの網羅的な情報解析から、137個のヘリカーゼ様蛋白質を同定し、新規な遺伝子21個について系統的な遺伝子破壊実験を行い、6個の必須遺伝子を同定した。また20個の新規遺伝子を含む43個のヘリカーゼ様遺伝子について、7種類の培養(処理)条件(栄養培養、貧栄養培養、胞子形成培養、熱ショック処理、紫外線照射、MMS処理、hydroxyurea処理)における転写量のレベルをNorthern解析によって詳細に検討した結果、幾つかの条件特異的な発現上昇を示す機能未知遺伝子が見出された(YER176W:胞子形成培養;YHR169W:紫外線照射、hydroxyurea処理;YFR038W:hydroxyurea処理など)。更に興味深いことに、ヘリカーゼ様遺伝子の70%以上で熱ショックによる転写量の増大が観察された。この現象は、熱ショック蛋白質合成の急増時に抑制される他の蛋白質合成を補償している可能性、あるいはストレス応答でヘリカーゼ様蛋白質が何らかの役割を果たしている可能性が考えられた。また本研究で同定された新規ヘリカーゼ様遺伝子のうち、国内外で解析の進んでいない15個の遺伝子についてクローニングを完了し、蛋白質発現系の構築を進めた。大腸菌による発現で可溶性になる蛋自質は少なかったが、そのうちYd1084w蛋白質はタグによる精製に成功し、生化学的な解析を行った結果、RNA依存性ATPaseであることを初めて明らかにした。Yd1084w蛋白質はアミノ酸配列の類似性などから、pre-mRNA splicingの初期過程に働くRNAヘリカーゼ蛋白質であることが強く示唆された。
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