グラム陰性菌の外膜主要成分であるリポ多糖(LPS)は血清中のLPS結合タンパク質と複合体を形成したのち、マクロファージ細胞表面抗原CD14に結合し、この細胞に様々な刺激を伝達する。CD14はGPIアンカータンパク質で細胞質ドメインを持たないため、単独で情報を細胞内へ伝達できず、LPSの刺激情報を伝達するためにはCD14と相互作用する因子の存在が予想されているが、その実体は未だ明らかではない。 CD14を介したLPS刺激による細胞応答の初期過程で、NF-kBの活性化、すなわち、NF-kBが細胞質から核内へ移行することが知られており、このNF-kB活性化はLPS刺激後速やかに(10〜30分)進行し、これがサイトカインなどの生理活性物質の産生に必須である。しかし、このNF-kBを活性化するシグナル伝達分子機構の詳細はまだ明らかではない。我々はLPSがCD14を介してホスホリパーゼD(PLD)およびホスファチジン酸脱リン酸化酵素(PAP)を活性化しホスファチジルコリン(PC)由来の一過性のジアシルグリセロール(DAG)産生を引き起こし、このDAG産生がNF-kBの活性化に必須であることを見い出した。さらに、このLPSによるPLDの活性化とNF-κB活性化のシグナル伝達機構においてPLDの活性化因子であるRhoAが関与することも明らかにした。
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