研究課題/領域番号 |
11672204
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
西島 正弘 国立感染症研究所, 細胞化学部, 部長 (60072956)
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研究分担者 |
山河 芳夫 国立感染症研究所, 細胞化学部・生体高分子化学室, 室長 (50100102)
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キーワード | マクロファージ / LPS / Toll-like receptor (TLR) / NF-κB / タキソール / CD14 / リピドA / MD-2 |
研究概要 |
LPSによるマクロファージ活性化にはTLR4を介するシグナル伝達が重要であることが近年明らかにされている。lipid Aの構造類似体がLPSのアンタゴニストとして作用することが知られているが、これらアンタゴニストのTLR4を介するシグナル伝達への作用を解析した。lipid Aの構造類似体B464とRS M256はマクロファージ系細胞J774.1のLPSによるNF-κB活性化を阻害するアンタゴニスト作用を有している。しかしながら、これらの薬剤はLPSとJ774.1細胞上のレセプターCD14との結合は顕著には阻害しなかった。このことから、アンタゴニストはLPSがCD14と結合した後のステップを阻害すると考えられた。一方、マウスプロB細胞Ba/F3にTLR4とco-receptorであるMD-2を共発現させるとBa/F3はLPS感受性になりNF-κBの活性化が誘導されるようになるが、これらのアンタゴニストはLPSによるNF-κB活性化を抑制した。このことから、lipid A構造類似体のLPS-アンタゴニスト作用はTLR4を介するシグナル伝達の抑制であることが示唆された。 抗癌物質タキソールは構造的にはLPSと全く異なっているが、マウスのマクロファージに対してLPS様活性を示すことがこれまでに知られていた。そこでタキソールのLPS様刺激の分子メカニズムを解析した。Ba/F3細胞株にマウスTLR4とマウスMD-2を共発現させた場合にタキソール刺激によるNFκB活性化が認められた。TLR4のみを発現させた場合は活性化は極めて弱かった。LPS刺激の場合と同じくTLR4とMD-2の両方の発現がNFκBの活性化に必要であることがわかった。さらに興味深いことにヒトTLR4とヒトMD-2を共発現させた場合にはLPS刺激とは異なりタキソール刺激によるNFκBの活性化は見られなかった。以上の結果からTLR4・MD-2複合体がLPSだけでなくタキソールのシグナルも伝えることが明らかとなった。タキソールはマウスではLPS様活性を示すがヒトではLPS様活性を示さないことが知られている。TLR4・MD-2複合体の種差がタキソール感受性の種差の原因になっていると考えられた。
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