研究概要 |
本年度はヒト平滑筋細胞とヒトもしくはマウスのマクロファージで構築された混合培養系に、前年度確立した蛍光プローブの適用を試みた。冷却CCDカメラを設置した蛍光顕微鏡下で、蛍光プローブでラベルしたマクロファージが平滑筋が分泌したマトリックス内に潜り込み平滑筋層の近くに存在するときの蛍光をとらえることができた。 また、ビタミンEの同族体4種α-,γ-トコフェロール(αToc,γToc)およびα-,γ-トコトリエノール(αToc3,γToc3)について、抗酸化活性の評価を行ったうえ、内皮細胞の接着分子発現に対する抑制作用について比較検討を行った。これら4種の同族体の化学的な抗酸化活性はほぼ等しかった。TNFα刺激によるCD54の発現に対しても4種の同族体によって25〜35%の抑制がみられた。また、ルシフェレースアッッセイによるVCAM1の遺伝子発現は約80%抑制された。しかしながら、内皮細胞に取り込まれた同族体の濃度はToc3がTocの10倍以上高いことが確認され、側鎖の2重結合が細胞膜への取り込みや保持に有利であることが示された。細胞に存在する濃度の違いを考慮に入れると、Toc3に比べTocのほうが接着分子発現に対する抑制効果は高いと判断される。これらの結果は遺伝子発現調節を介する細胞機能制御に抗酸化物質の抗酸化活性で説明できないメカニズムが働いていることを示唆している。平滑筋とマトリックス上に内皮細胞を播種し、酸化変性リポタンパクの刺激による細胞接着誘導に対する抗酸化物の作用解析システムの基礎が確立できたものと考えられる。
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