これまでに創製してきた分化誘導剤について、細胞種並びに分化の方向に関するスペクトラムを解析し、それらの各種分化誘導剤としてのキャラクタリゼーションを確立することを目的として、ヒト培養細胞株に各種分化誘導剤(レチノイド、ヘミン、フォルボールエステル、オカダ酸、創製活性化合物)等を作用させ、その際にヘムオキシゲナーゼ阻害剤を共存させ、分化に及ぼす効果を検定した。 これまでにK562細胞の分化については、ヘミンにより赤芽球系分化が誘導されるが、フォルボールエステル(TPA)により単球に分化することが知られている。TPAにより単球へ分化するのは、TPAの作用によりK562細胞より誘導されるヘムオキシゲナーゼによりヘムが分解されるために赤芽球系への分化が阻害されているためではないかと推定した。 K562細胞のTPA処理に際して、ヘムオキシゲナーゼ阻害剤であるスズプロトポルフィリンを共存させたところ、赤芽球系への分化が濃度依存的にも上昇したが、単球系への分化は減少した。スズブロトポルフィリンは単独では、赤芽球系への分化も、単球系への分化もほとんど認められなかった。これらの事実は先の仮説を裏付けており、スズプロトポルフィリンによってヘムオキシゲナーゼ活性が抑制された結果、赤芽球分化の促進と単球系分化の減少を引き起こしていると解釈できる。K562細胞分化の方向付けにおいて、ヘムオキシゲナーゼが少なくとも部分的には関与していると考えられる。
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