分化誘導剤による細胞分化を修飾する諸因子、およびその作用機序を明らかにするために、強力な発がんプロモーション活性を示す、分化誘導剤であるフォルボールエステル(TPA)に焦点を当てた研究を展開した。TPAは特異的にPKCと結合するとされているが、PKCと異なる特異的レセプターの存在が示唆されている。PKC以外のTPA依存的調節因子の探索と同定を行った。すでに、ヒストンH1、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)などが候補として見つかっている。 (1)培養細胞を破砕し、その分画を詳細に探索することによって、新たにTPA特異的結合タンパク3種を見いだし、各々とTPAとの結合をスキャッチャード法により解析した。結合定数は10^6〜10^9とPKCに匹敵するものであった。(2)PDIとTPAとの結合の詳細な解析結果より、結合定数を10^6と見積もった。加えて、TPAがPDIの活性に及ぼす濃度を検討したところ、TPAはPDIの活性をμMオーダーで阻害することを見いだした。(3)TPA自体には取り扱いに制限があるので、これに代わるプローブをコンビナトリアルケミストリーの手法を応用して系統的作成した。構造の簡単なラクトン誘導体を系統的に合成し、PKCに対して特異的結合活性を持つ化合物の作成に成功した。(4)これをリードに光アフィニティラベル化剤、SPR用固定膜リガンドの合成が進行中である。
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