これまで強力な発がんプロモーション活性を示す、分化誘導剤であるフォルボールエステル(TPA)に焦点を当てた研究を展開し、PKC以外のTPA依存的調節因子の候補の一つとして、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を見いだし、TPAとPDIの結合定数が10-6であることを明らかにしてきた。 PDIはレチノール、チロキシンなどの結合タンパク質としても知られており、近年、分子シャペロンとしての働きが重要視されていることから、分子誘導剤を含む各種バイオファクターがPDIに及ぼす影響について検討した。 PDI活性は、変性不活性型(scrambled) RNaseのPDIによる活性型RNaseへの復帰を指標に測定した。RNase活性はcCMPのCMPへの変換活性を指標とした。 検討を行ったバイオファクターは様々な強度でPDI活性を阻害し、特にTPAを含む発がんプロモーション活性を示す各種天然有機化合物はいずれもμMオーダーでPDI活性を阻害した。以上からPDIは、その詳細な生理的意義は不明なるものの、TPA以外の分化誘導剤においても、分化誘導剤依存的な調節因子の候補の一つと為りうると考えられる。
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