β_1アドレナリン受容体(β_1受容体)に選択的なアゴニストとして知られているザモテロール、プレナルテロール、ドブタミン、デノパミンおよびT-0509を用いてβ_1選択性に関与するβ_1受容体上の部位およびアミノ酸を検討した。このうち、プレテナロールとドブタミンはリコンビナントのβ_1およびβ_2受容体を用いた受容体結合実験では、β_1受容体選択性を示さなかった。他の4種のアゴニスト(ザモテロール、ノルアドレナリン、デノパミンおよびT-0509)は、β_1受容体に対して約10倍高い親和性を示した。β_1受容体の第2細胞膜貫通領域をβ_2受容体の相当する領域と置き換えると、これらアゴニストの受容体選択性は消失した。また、β_2受容体にβ_1受容体の第2細胞膜貫通領域を導入すると、アゴニストの親和性は上昇した。次に、β_1受容体の第2細胞貫通領域のどのアミノ酸が選択性に寄与しているのか、β_1受容体とβ_2受容体との間で異なるアミノ酸をアラニンに置換したアラニン置換型受容体を用い検討した。110番目のロイシン、117番目のスレオニンおよび120番目のバリンをアラニンに変換すると、これらアゴニストのうちデノパミンとT-0509の親和性は有意に減少した。しかし、ザモテロールは親和性の低下を示さなかった。従って、ザモテロールβ_1選択性は単一のアミノ酸によって決定されているのではなく、いくつかのアミノ酸が協調して働いていることが示唆された。三次元立体モデルを作製すると、117番目のスレオニンはデノパミンやT-0509のアミンの置換基と相互作用していることが、また120番目のロイシンおよび124番目のバリンは直接アゴニストとの結合に関与するのではなく結合部位を外側から支持するように働いていることが示された。これらの結果はβ_1選択性リガンドの開発に大きく役立つと期待できる。
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