カルニチン欠乏症は、最終的には心機能異常など致死的症状を示す病態であるが、主に遺伝性の全身性カルニチン欠乏症と、また臨床的な薬物投与や食事等栄養状態による二次性カルニチン欠乏症に分けられる。本研究では二次性カルニチン欠乏症の中で、薬物誘導型カルニチン欠乏症におけるOCTN2の寄与の可能性について、腎を中心とした臓器におけるOCTN2の有機カチオン輸送や薬物によるカルニチン輸送活性変動について解析を行うことにより、OCTNトランスポーターの生理的・薬物動態的役割ならびにカルニチン欠乏症との関連について解析を行った。ヒトならびにマウスOCTN2は、カルニチンをNa^+依存的に、有機カチオンの一種であるテトラエチルアンモニウム(TEA)をNa^+非依存的に輸送した。また、TEA以外にもメピラミンやベラパミル及びキニジンなどのカチオン性薬物を輸送した。一方、これらカチオン性化合物に加え、中性ならびにアニオン性化合物によってもカルニチン輸送活性は機能阻害を受けた。OCTN2が存在する腎臓においては、カルニチンはNa^+を駆動力とした再吸収に働くが、このような臨床的に使われる医薬品によって機能阻害を受けるということは、薬物誘導型の二次性のカルニチン欠乏症発症原因の一つとしてOCTN2が関与することを示すものであることが明らかになった。一方、他のOCTNメンバーOCTN1ならびにマウスOCTN3についても解析を行った結果、OCTN3精巣特異的な発現であり、またOCTN1は低いカルニチン輸送活性しか有せず、全身性カルニチン欠乏症としてはOCTN2が最も重要であることが示唆された。
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