研究概要 |
平成12年度は,11年度の成果を基に以下の3つの課題に関する理論・計算化学および実験的研究を行った。 1.低分子薬物分子モデルの計算化学的アプローチ:ピレスロイド分子の統一的構造活性相関 前年度までに開発した一連の薬物分子の活性強度の定量的関係を解析する3次元定量的構造活性相関法(3D QSAR)を,種々の骨格と配座を有するピレスロイドの解析を行った。配座多様性に関しては並列化計算法による網羅的配座探索法により,骨格多様性に関しては3D QSAR解析を用いた。その結果,活性関与部位の特定とその空間配置を明かにし,3D QSAR法は低分子薬物の受容体との相互作用に重要な知見を与えることを確認した。 2.低分子薬物分子-高分子受容体の実験アプローチ:各種の単糖のレクチンへの親和定数評価 前年度までに薬物分子-受容体相互作用の定量的知見を得ることを目的として糖関連分子とその受容体であるレクチン(ConA)等についての相互作用に関して,共鳴プラズモンセンサーを用いたConAと各種単糖分子の相互作用をその定量化を行った。これらの結果から各種の糖の親和定数と水酸基の立体配置と関連を明かにした。さらに,α-D-glucoseからβ-D-glucoseへの時間的な構造変化と親和性の変化をNMR用いて追跡し,構造変化と親和性変化が並行関係にあることが分かった(論文投稿中)。 3.低分子薬物分子-高分子受容体モデルの計算化学的アプローチ:相互作用の分子動力学シミュレーション 高分子受容体モデルとして設定したATP/ADP透過担体については,重要なループ部分のみに着目した複合体モデルの分子動力学計算の結果,透過活性を示すATP,ADPと透過活性を示さないAMP,GTPとでは異なる挙動を示し,実測結果と対応する結果を得た(論文投稿中)。
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