研究概要 |
本研究では,低分子薬物分子と高分子受容体モデルを設定し,以下の3つの課題に関する理論・計算化学および実験的研究を行った。 1.低分子薬物分子モデルの計算化学的アプローチ 一連の薬物分子の活性強度の定量的関係を解析する3次元定量的構造活性相関(3D QSAR)法を構築し,これまで取り扱いが困難であった種々の骨格と配座を有する低分子薬物分子としてピレスロイドを解析対象に選択した。配座多様性に関しては並列化計算法による網羅的配座探素法により,骨格多様性に関しては3D QSAR解析を用いた。その結果,活性関与部位の特定とその空間配置を明かにし,3D QSAR法は低分子薬物の受容体との相互作用に重要な知見を与えることを確認した。 2.低分子薬物分子-高分子受容体の実験・計算化学的アプローチ 薬物分子-受容体相互作用の定量的知見を得ることを目的として糖関連分子とその受容体であるレクチン(Con A)等についての相互作用に関して,共鳴プラズモンセンサーを用いたCon Aと各種単糖分子の相互作用をその定量化を行った。親和定数と水酸基の立体配置と関連を明かにした。さらに,α-D-glucoseからβ-D-glucoseとの平衡状態への時間的な構造変化と親和性の変化に関してNMRを併用して追跡し,構造変化と親和性変化が並行関係にあることが分かった。 3.低分子薬物分子-高分子受容体モデルの計算化学的アプローチ 高分子受容体モデルとして設定したATP/ADP透過担体については,重要なループ部分のみに着目した複合体モデルの分子動力学計算の結果,透過活性を示すATP,ADPと透過活性を示さないAMP,GTPとでは異なる挙動を示し,実測結果と対応する結果を得た。
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