活性酸素、フリーラジカルは生体内で酸化ストレスを誘発し、がんなどの様々な疾病に関与することが明らかにされている。よって、活性酸素、フリーラジカルを消去する抗酸化物質は医薬品として期待される。本研究では、ビタミンC、Eを規範とした従来にない抗酸化剤を創製した。 1.ビタミンE類縁体 ビタミンEのフチル側鎖をカルボン酸としchroman環にさらにベンゼン環を縮合させたbenzo[h]chroman環化合物を合成した。本類縁体のスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル消去活性を、ESRスピントラップ法を用いて検討した。対照化合物trolox(ビタミンEの側鎖をカルボン酸に変換した化合物)と比べ強い活性酸素消去活性を持つことが明らかとなり、benzo[h]chroman環化合物はchroman環化合物より優れた抗酸化剤であることが示された。 2.ビタミンC類縁体 ビタミンCの側鎖を除きラクトン環内の酸素原子を炭素に置換した化合物reductic acid(RA)を合成した。RAもヒドロキシルラジカル消去活性を有していたが、ビタミンCより活性は低かった。しかし、RAのキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害活性を見いだした。XO阻害活性はビタミンCにはなくRAに特異的であった。XOは生体内活性酸素生成系として様々な疾病と関連していることから、XO阻害活性を併せ持つ抗酸化剤としてRAは期待される。また、XOは生体内でキサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH)作用も持っており尿酸生成に関与している。XDH阻害剤であるアロプリノールは痛風治療薬に用いられていることからRAにも同様の活性が期待できる。 以上活性酸素消去活性、ならびに活性酸素生成抑制効果を持つ化合物を見出した。これらの知見は活性酸素が原因と考えられるがんなどの疾病の予防や治療に有効な医薬品開発につながる。
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