研究概要 |
ラット尾動脈内皮細胞におけるATP遊離機構とメカノレセプター(機械的刺激受容器)の関連性について,画像解析装置および,ATP可視化技術を用いて,以下の点について検討した。 1.ATPの遊離に対する伸展刺激の影響: 血管組織標本(ラット尾動脈)に様々な張力(0.l〜2.0g)の伸展刺激を加えたが、ATPの遊離に対する影響は認められなかった。 2.ATPの遊離に対する外液浸透圧変化の影響: (1)血管組織標本およびラット尾動脈培養内皮細胞において、外液を低張性にすることにより、[Ca^<2+>]iの上昇とATPの著明な遊離が観察された。 (2)培養内皮細胞において、[Ca^<2+>]iはATP(10^<-6>M)により上昇し、この上昇はプリン受容体(P2受容体)拮抗薬であるsuramin(10^<-4>M)により消失した。 (3)外液を低張性にすることにより観察された[Ca^<2+>]iの上昇は、suraminによっては全く影響されなかった。また、suramin自身の影響は認められなかった。 (4)低浸透圧刺激による[Ca^<2+>]iの上昇とATPの遊離は、細胞内のカルシウムイオンをキレートするBAPTA-AM(10^<-6>M)により完全に抑制された。 以上の結果から、低浸透圧刺激により惹起される[Ca^<2+>]iの上昇は、遊離された内因性ATPによるものではなく浸透圧の低下に伴う細胞体積の変化、即ち機械的刺激に起因することが明らかにされた。さらに機械的刺激に応答するATP遊離機構には[Ca^<2+>]iの上昇が深く関与していることが示唆された。本結果は、第8回バイオイメージング学会にて発表した。
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