研究概要 |
ダイオキシン汚染土壌の浄化法の開発を目的として、白色腐朽菌を用いる生物分解法と化学分解法に関する実験を行った。 白色腐朽菌による生物分解:ファネロキエーテ・クリソスポリウムは高温、酸素100%でのみリグニン分解酵素を分泌するとされていたが、前回、培養条件の最適化により、室温、空気環境下で分泌させることが可能となった。現在、ダイオキシン分解に関与するリグニン分解酵素の大量分取を試みている。また、シイタケによるダイオキシン分解活性の本体と思われる菌体外酵素についても、現在、その精製を急いでいるところである。 化学分解法:これまでの検討の結果、Fe^<3+>-H_2O_2混合試薬がダイオキシン2塩化物(DCDD)に対して、強い分解活性をもつことがわかった。70℃、Fe^<3+>(8mM)-H_2O_2(1%),15分間でDCDDはほぼ完全に分解でき、また、汚染モデル土壌に対しても、有効であった。DCDDとの反応溶液中には、4-クロロカテコールが僅かながら存在していることが、GC-MS分析から示唆された。僅かしか検出されないのは、分解中間体である4-クロロカテコールがDCDDより非常に速く分解されるためと考えられた。これらのことから、この化学分解法においても、白色腐朽菌による分解機構と類似の分解メカニズムが推測された。また、ESRのスピントラップ実験により、DCDD分解へのヒドロキシラジカルの直接的な関与が否定された、むしろ、酸化力が強い4あるいは5価の鉄の関与が考えられた。 無毒化法:土壌中のダイオキシンを分解せずに、除去することも、土壌浄化の一手段である。われわれは、土壌中のDCDDが水蒸気蒸留で完全に除去できることを見だし、実際の汚染土壌でも有効であることを明らかにした。
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