植物エストロゲンがヒトの健康増進に資する作用の機構に関する基礎的研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11672235
• 研究機関: 国立医薬品食品衛生研究所
• 研究代表者: 小澤 正吾 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (20185581)
• キーワード: 内分泌撹乱作用 / ヒト / 薬物代謝酵素 / 硫酸転移酵素 / 代謝活性化 / 解毒的代謝 / 遺伝子発現 / エストロゲン応答性

研究概要

報告者は試験管内でエストロゲン様作用を評価するE-screen系を基本として、ビスフェノールAのエストロゲン様作用をβ-エストラジオールと比較する系を構築した。本系を用いて、報告者はビスフェノールAのようなエストロゲン様作用が疑われている物質は硫酸抱合の過程により、無毒化されることを明らかにした。平成13年度はビスフェノールAやイソフラボノイド(ISO)などにより惹起されるE-screen系で用いられているエストロゲン感受性細胞であるヒト乳癌由来MCF-7細胞の遺伝子発現の変化を調べた。エストロゲン様作用依存的であると考えられているpS2遺伝子はエストロゲン受容体を発現しているある種の婦人科癌細胞に発現が認められる。ビスフェノールAや典型的エストロゲンであるβ-エストラジオールは、濃度依存的にpS2遺伝子を活性化させ、pS2遺伝子発現の亢進を認めたが、E-screenで評価する細胞増殖を惹起するのに必要な濃度より高い濃度が必要であった。ケンプフェロール等のISOもE-screen系で細胞増殖の惹起が認められ、確かにエストロゲン様作用を示すことが確認された。最近、DNAマイクロアレー等の新しい技術が開発されている。このような技術を用い、細胞増殖と遺伝子発現を惹起する被験物質濃度とを比較し、エストロゲン様作用との関連が深いと考えられる遺伝子を抽出することと、ビスフェノールAのようなエストロゲン様物質と、ISOとで発現誘導する遺伝子の差異を調べることが必要であると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Murayama, N., Ozawa, S.et al.: "Expression of CYP2A6 in Tumor cells augments cellular sensitivity to tegafur"Jpn. J. Cancer Res.. 92・5. 524-528 (2001)
• [文献書誌] Sai, K., Ozawa, S.et al.: "A new metabolite of irinotecan in which formation is mediated by human hepatic cytochrome P450 3A4"Drug Metabol. Dispos.. 29・11. 1505-1513 (2001)
• [文献書誌] Hanioka, N., Ozawa, S.et al.: "High performance liquid ehroma tographic assay for glucuronidation activity of SN-38 in human liver microsomes"Biomed. Chromatogr. 15・5. 328-333 (2001)
• [文献書誌] Hanika, N., Ozawa, S.et al.: "Human liver UDP-glucuronosyltransferase isoforms involved in the glucuronidation of 7-ethhyl-10-hydroxycamptothecin"Xenobiotica. 31・10. 678-699 (2001)
• [文献書誌] Nakamura, T., Ozawa, S.et al.: "Apparent low frequency in sequence variability in the proximal promoter region of captochrome P450(cyp)3A5 gene"Biol. Pharm. Bull. 24・8. 954-957 (2001)
• [文献書誌] 小澤正吾: "薬物代謝酵素の遺伝子多型と疾病感受性・薬物反応性の個体差"Molecular Medicine. 38・10. 1146-1150 (2001)