本研究で、毒作用を有すると考えられているエストロゲン様物質であるビスフェノールAとゲニステインをはじめとする植物エストロゲンについて、MCF-7細胞を用いたインビトロでのエストロゲン様作用を比較した。その結果、ゲニステイン以外に本研究で用いた植物エストロゲンであるダイゼイン、ナリンゲニン、ケンプフェロールのエストロゲン様作用はかなり弱かった。また、ヒト肝サイトゾールによるエストロゲン様物質の硫酸抱合活性が認められ、Km値で比較すると植物エストロゲンよりもビスフェノールAの方がヒト肝の酵素に対する親和性は高いと思われた。ビスフェノールAに対しては、硫酸転移酵素分子種のうち、P-ニトロフェノールを典型的基質とする熱安定なフェノール硫酸転移酵素分子種が主代謝酵素分子種であることを明らかにした。しかしながら、ゲニステインとビスフェノールAの作用機構の差異を明確にするには至らなかった。最近、遺伝子発現を網羅的に解析するDNAチップが開発されつつある。エストロゲン応答性の細胞を用いてゲニステインとビスフェノールAや17β-エストラジオールによる細胞の遺伝子発現の差異を見ることは、エストロゲン様物質と分類されているが疫学的にヒトの健康に資する作用を有するとされる植物エストロゲンの作用を解明する一つの有力な手段になりうると思われる。あるいは、ラットなどの実験動物を用いてこれらエストロゲン様物質の作用の機構の差異を調べることも非常に有効であると思われ、今後遺伝子発現の網羅的解析を行うことが必要であると考えられた
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