研究概要 |
【目的】 筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経難病は,有効な治療法はないが,QOLを高める療養の在り方により,意義のある生活を全うできる。自己決定に基づく安楽死を選択したと思われるケースも,実態は棄怨死である場合が少なくない。また安楽死の原因として療養体制,緩和医療の不備があると推察される。そこで,最後まで尊厳ある生を追求するための療養環境緩和医療について,国際比較を行う。そして,安楽死の選択分岐の要素を明らかにし,自己決定に基づいた悔いのない療養生活をALS等の神経難病患者が全うできるような基礎資料を提供する。 【方法】 安楽死は,ALSそのもの苦痛よりも,家族,医療者から次第に見捨てられてゆく苦痛に原因がある。安楽死の希望は,病期として初期〜中期に多い。安楽死を希望する患者と希望しない患者とで,QOLに違いがある。安楽死の背景には,緩和医療の不備がある。以上の仮説を検証するため,初年度は国内ALS患者,家族,主治医,看護婦に対し,QOLを向上の要件,安楽死,緩和医療について,十分な倫理的配慮の下に,聞き取りを行った。また,医師による自殺幇助が唯一合法化されている,米国オレゴン州政府当局を訪ね,神経難病患者の自殺幇助についてインタビューをした。 【結果と考察】神経難病患者のQOLを測定する調査票,先行研究を精査したが,社会医学的観点からの国際比較研究は代表者らによる98年度の調査以外には,てんかんについてC.B.Dodrill 1999があるのみであった。QOL向上に最も期待されるもの(75.9%,n=83)は,指名制介助人制度であり,伊藤・濃沼らの提言により,宮城県単独事業として平成12年1月よりスタートした。緩和ケア病棟に,末期神経難病患者が希望に応じて入棟できるようにすることは,聞き取り対象者すべての希望であり,入棟条件の整備が喫緊の課題であることが判明した。
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