ヒトゲノム解析計画がほぼ完了した現在、様々な疾患に関与する遺伝子が明らかとなりつつある一方で、「遺伝学」の普及(教育)が極めて遅れているわが国では、患者の意思を決定する遺伝に関する個人認識に偏りがある。すなわち、遺伝問題がタブー視されたり、あるいは、遺伝子診断や遺伝子治療への過度の期待、また受精卵診断/出生前診断への利用が期待されたりする。しかし、それ以前に患者自身のQOLや人権配慮、福祉、心のケアもまた、重要なファクターであり、常に顧みられなければならない問題である。ゲノムの解析により、遺伝子の働きや生命の不思議さがわかってきた今こそ「遺伝医学」と「生命倫理」の正しい知識の啓蒙と普及が必要である。 これは、単に医療関係者ばかりに普及するものであなく、患者自身やその家族、周りに関係する人、そして一般の人にも必要なことである。それらの啓発には、関係する医療、福祉、教育など多角的な情報の発信やその受信によってなされるべきである。そこで、我々は、非医療領域の専門家や一般の人にも遺伝性疾患を正しく認識してもらうため、また、医療関係者には、カウンセリングの際に役立つ福祉情報が容易に入手できるように広い領域にわたる情報データベースを構築した。遺伝に対し偏見や差別がある日本の社会の中では、医療現場でのカウンセリングでは時間的に限界があるので、インターネットを通じ、上記の情報を広い範囲に提供することを目標にしている。
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