研究概要 |
本研究の当該研究期間の研究実績のまとめを述べる。 CdTe検出器の補正プログラムとして、Castroらが示したstripping法の式にインコヒーレント散乱(コンプトン散乱)を挿入し、Cd,Teの各元素のK-escapeをK_αとK_βに分離し、ホールのtrappingの影響などの補正を行い、さらに、CdZnTe検出器用の補正プログラムを開発した。この補正プログラムを使って、CdZnTe検出器で測定した診断用X線スペクトルを補正した結果、管電圧が60kV以下のX線スペクトルは、高純度Ge検出器で測定したスペクトルとよく一致するが、管電圧70kV以上では、高エネルギー領域のX線スペクトルが少し異なることがわかった。 乳房撮影用X線装置のMoとRhターゲットのX線管から約471mmの距離にCdZnTe検出器を設置して、通常の乳ガン診断時の撮影条件である管電圧25-32kV,240mAsで、MoとRhのフィルタを付加した場合のX線スペクトルを35μmのピンホールコリメータシステムを通して測定し、開発した補正プログラムを使って補正した結果、高純度Ge検出器で測定されたBRHのスペクトルデータとその形状がだいたい一致することが確かめられた。さらに、厚さ0.1mmから0.8mmまでのアルミニウム被写体を入れて、CdZnTe検出器で測定したスペクトルから計算した減弱曲線と軟X線用線量計で測定した減弱曲線を比較した結果、だいたい一致することがわかった。また、乳房X線写真作成時の被写体コントラストについて、被写体透過後のX線スペクトルをCdZnTe検出器で測定して検討した。さらに、X線減弱に関する指数関数の法則を使って理論計算から乳房撮影用X線装置の固有ろ過及び付加フィルタ厚の被写体コントラストに及ぼす影響についても検討した。
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