研究概要 |
疾病管理(disease management)の枠組みにより,糖尿病予防の効果的で効率的な健康サービスの戦略について検討を行った。 1)わが国の糖尿病の社会的負担について,疾病費用と生活の質を評価した結果,つぎのことが認められた。 1.直接費用は1兆3千億円となり,その内訳は,診療費が1兆円,患者・家族の支払が3千億円であった。また,間接費用は2兆9千億円となり,その内訳は,労働損失が2兆7千億円,早期死亡が2千億円であった。これらを総合すると,糖尿病の疾病費用は,4兆1千億円にのぼると推定され,社会的な負担が極めて大きいことが明かとなった。 2.糖尿病患者の生活の質について,EuroQolおよび効用により測定した結果,合併症により移動,身の回り,日常生活,痛み,不安などの障害率が3倍から10倍増加することが認められた。また,死亡を0,望ましい健康を1とすると,糖尿病患者は0.7から0.6の水準にあることが示された。 2)糖尿病の健康サービスの利用状況を調査した結果,香川県K地区における糖尿病診療については,国際的な質の評価指標を基準にすると,平均点は70%を超えており,比較的高い水準を示していることが示された。しかしながら,比較的大きなバラツキが認められ,勤務種類,診療科,医師の年齢などが,有意に影響していることが認められた。したがって,今後は,こうした診療状況を改善するために,根拠に基づくガイドラインの地域での開発,利用が必要と考えられた。
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