研究概要 |
糖尿病の効率的な健康サービスの戦略を確立するために,疾病管理による評価を実施した。今年度は、糖尿病の健康サービス戦略について、生涯に渡る健康利益と費用を評価し、それに基づき経済的効率の検討を行った。 1)糖尿病の疾病経営管理の中核となる2型糖尿病の合併症予防について評価した結果、強化インスリン療法は通常療法に比べて、生存年が1.3年長く,しかも生活の質で調整した生存年(QALY)でも1.9年優れていることが推定された。一方,費用は3400万円削減できることが認められた。したがって,強化インスリン療法は,通常療法に比べて優勢(dominant)であった。また、SU剤による強化療法も、通常療法に比べ生存年とQALYが延長し、費用が減少することが認められ、優性であった。 2)地域における糖尿病(2型)スクリーニングの有効性と経済的効率について検討を行った結果、スクリーニングの開始年齢が40歳の場合,生存年を1年延長するのに要する費用は,毎年,5年ごと,1回のみ実施で,それぞれ1,844万円,1,825万円,1,603万円であった。QALYを1年延長するのに要する費用は,それぞれ957万円,954万円,805万円であった。この結果は,スクリーニング実施の中等度の根拠を示すものであった。 3)糖尿病患者における微量アルブミン腎症スクリーニングは、ACE阻害薬による早期治療により、透析導入率が半減し、QALYは0.43年の増加することが認められた。また、網膜症スクリーニングでは、2年毎,1年毎,半年毎のスクリーニングにより、QALYが0.007、0.11、0.87延長することが推定された。これらは、いずれも早期スクリーニングによる合併症予防が効果的であることを示している。
|