50症例のATL患者について、蛍光in situハイブリダイゼイション(FISH)法と独自に単離した14q32領域由来のBACクローンを用いて詳細な分子細胞遺伝学的解析を行い、1)急性型とリンパ腫型ATLの約60%の症例で14q32領域を含む1コピーの増幅が検出され、慢性型のATLではこの増幅が全く認められないこと、2)この最小増幅領域は、14q32.2領域に存在する数10kb以内の極めて狭い領域に限局されること、3)この最小増幅領域近傍には染色体転座が好発すること(全ATL症例の10%以上)、4)解析したATLの1症例ではこの領域における1コピーの増幅に加え、転座好発地点から約100kb離れた領域で約40kbにわたってホモ欠失が生じていること、5)さらに大腸癌を始めとする各種固形癌において報告されている共通欠失領域にも含まれることを明らかにした。これらの結果は、この領域にATL発症に関与する癌遺伝子や癌抑制遺伝子が存在することを強く示唆している。われわれは以前14q32.1領域からT細胞レセプター遺伝子座の相互転座によって活性化される癌遺伝子TCL1ならびにTML1遺伝子を単離したが、本領域は、これらの遺伝子座よりもさらに染色体末端側に存在した。この領域のBACならびにコスミドクローンによる整列化は既に完了し、そのうち約140kbについて塩基配列を明らかにした。染色体異常集積地点周辺からATL発症との関連が強く示唆される新規遺伝子を発見し、cDNAの単離を行った。現在ATLとの直接的な関連について、より詳細な解析を進めている。
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