研究概要 |
我々は、Hmx1遺伝子の発現がマウスの胎生10-12日において第二鰓弓に由来する神経冠細胞(neural crest cell)、神経網膜、三叉神経節、背側神経根、及び胸部交感神経節にあることをこれまでに報告し、ホメオボックス遺伝子の重要性から推察してHmx1遺伝子がこれらの神経由来細胞の発生に寄与しているのではないかと思わせるデータを示してきた。本研究の目的は、Hmx1遺伝子の機能を総合的に解析することである。ヘテロ接合体どうしを交配しホモ接合体が発生してくるか、どのような異常表現型を示すかを観察した。第一世代のヘテロ接合体F1(C57BL/6x(129Svx129/SvJ))同士の交配の結果、誕生した子孫の数の割合は野生型:ヘテロ接合体:ホモ接合体=61:111:12であり明らかに期待される数よりホモ接合体が少ない。生後に死亡したマウスは観察できないので、ホモ接合体が減少しているのは明らかに子宮内死亡によると考えられる。胎生8.5,9.5,10.5日には子宮内には明らかに発育遅延し、吸収されている胎児が見られ、吸収されている胎児はホモ接合体と考えられる。これらの死亡胎児がどの細胞の発生異常によるのかは現在検討中である。 マウスはC57BL/6系統と交配し維持している。F2(遺伝的背景は1/4が129/Sv系統、3/4がC57BL/6系統)ヘテロ接合体どうしを交配した場合にはホモ接合体の出現する割合が明らかに高くなり、母親か、または胎児の遺伝的背景の差によりHmx1遺伝子のホモ接合体の胎児期の死亡は回避され、全く正常でる。これらの何ら異常を示さないマウスにおいてもRNase protection assay法によりhmx1遺伝子の発現はなくなっていることが示されている。
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