褥瘡は、持続的圧迫による阻血が原因となり、局所的な循環不全の結果生じる壊死が原因の一つに考えられている。末梢循環改善薬の多くのものが理論的には褥瘡に有効と考えられる。褥瘡発症機構の解明とその予防看護方法の開発のために、末梢血管血流循環の改善に影響力のあるアデノシンおよびアデノシン類似化合物の作用に注目した。そこで、イヌの膵臓外分泌を指標にして、自己血液潅流膵臓標本を用いて、外分泌に対するアデノシン受容体作動薬の作用を検討しさらにその受容体の分類を行なった。選択的なA_<2A>アデノシン受容体アゴニストであるCGS21680(1ー300nmol/kg)は、用量依存的に膵外分泌量を増加させ、その最大反応はおよそ30nmol/kgでみられた。そして、分泌液中の重炭酸濃度を増加せ蛋白濃度を減少させた。一方、選択的なA_1アデノシン受容体アゴニストであるCPA(1ー300nmol/kg)は、膵外分泌に対して作用を有していなかった。選択的なA_<2A>アデノシン受容体アンタゴニストであるDMPX(5ー50nmol/kg)は、CGS21680による用量反応曲線を有意に右方に平行移動させた。 シールド解析によると、pA_2値は8.3であった。しかし、選択的なA_1アデノシン受容体アンタゴニストであるDPCPX(100noml/kg)は、CGS21680の作用に影響を与えなかった。CGS21680(10nmol/kg)による膵外分泌反応は、PDE IV阻害薬であるrolipram(0.1nmol/kg)により有意に増強された。 以上より、イヌの膵外分泌腺にはアデノシンA_<2A>受容体が存在し、水と電解質の分泌に関与していることが推測された。
|