研究概要 |
皮膚は生体を外界から保護する城壁のようなものであり、これが破壊された場合には早急にこれを修復しようとする創傷治癒過程が働く。しかし、創傷が大きすぎる場合や深すぎる場合、あるいは治癒を妨げる循環障害、栄養障害、細菌感染やその他の基礎疾患がある場合には、自然治癒過程がうまく進まずに慢性の潰瘍になる。褥瘡は慢性潰瘍の代表的なものである。褥瘡は、持続的圧迫による阻血が原因となり、局所的な循環不全の結果生じる壊死が原因の一つに考えられている。末梢循環改善薬の多くのものが理論的には褥瘡に有効と考えられる。褥瘡発症機構の解明とその予防看護方法の開発のために、末梢血管血流循環の改善に影響力のある血管の性質をイヌ摘出脾動脈を用いて検討した。標本をKrebs-Henseleit溶液で定流量灌流(1ml/min)し、圧変化を記録した。イヌ摘出脾動脈は、1Hz(10V、1msec)、1-10パルスの電気刺激により単峰性の、30パルス以上の電気刺激では二峰性のしかも刺激依存性の収縮反応が観察された。その単峰性の収縮反応は0.1μMのprazosin前処理で影響を受けなかったが、1μMのα,β-methyleneATPで抑制を受けた。また単峰性の収縮反応は0.3μMのrauwolscine前処理により増加したが、1μMのimipramine前処理では影響を受けなかった。二峰性の内の第一峰の反応も同様の影響を受けた。以上より単峰性および二峰性の内の第一峰は主としてP2X-プリン受容体を介する反応であることが示唆された。さらに、そのプリン作動性伝達はシナプスのα2-アドレナリン作動性受容体により調節され、前シナプスのノルアドレナリンの再取り込み機構に制御されていないことが推測された。
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