頻尿・尿失禁の治療薬として汎用されるプロピベリン及びオキシブチニン(Oxy)の膀胱ムスカリン性受容体へのインビボ結合を明らかにする目的で、ラットに両薬物を経口投与後、経時的に下行大動脈より採血し、膀胱、唾液腺(顎下腺)、心臓及び結腸を摘出した。標識リガンドとして[^3H]NMSを用いる受容体結合測定法により、各臓器ムスカリン性受容体を定量した。またOxy及び活性代謝物(DEOB)の血漿中濃度を測定した。[実験成績及び考察]溶媒、プロピベリン及びOxyを経口投与後0.5〜24時間において、ラット各臓器において[^3H]NMSの特異的結合が有意に減少した。スキャッチャード解析より解離定数(Kd値)の有意な増加が認められ、これより受容体の結合親和性の低下が示された。また、Oxyの投与により、顎下腺及び心臓でのみ、最大結合部位数(Bmax値)、つまり受容体数の減少を認めた。Oxy投与による、各臓器の受容体親和性の低下の経時変化は、Oxy及びDEOBの血漿中濃度推移と良好に相関したが、受容体数の減少は、極めて持続的で、血漿中薬物濃度が著しく減少した12及び24時間後でも認められた。以上の結果より、インビボにおけるOxyのムスカリン性受容体結合動態(結合の活性、持続時間及び様式)は、臓器により相違することが明らかになった。特にOxyは経口投与により、膀胱より顎下腺の受容体に強力かつ持続的に結合することが示唆され、このことは、本薬物の内服患者の50%に唾液分泌の抑制(口渇)の副作用が頻発するという臨床所見と符合し、これらの知見を踏まえ、平成12年度は膀胱選択的な新規薬物並びにOxyの経皮吸収製剤を用いて、ムスカリン性受容体結合動態を詳細に検討する。
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