研究概要 |
腸管出血性大腸菌O157;H7(O157)による臓器障害にはリポ多糖(LPS)とベロ毒素(VT_2)が関与しているが、その病態は十分に解明されていない。そこで本研究では、それぞれを投与した際の病態学的特徴を検討した。 1.LPSの時間毒性 Wistarラットを用いてLPS(5mg/kg)を9:00あるいは21:00に1回投与し、投与時刻による臓器障害の差を検討した。その結果、臓器障害の程度は21:00投与の方が9:00投与よりも大であった。また炎症性サイトカインであるIL-6の血中濃度や臓器における産生能も21:00投与の方が大であった。以上より、LPSの投与時刻による臓器障害の差にIL-6反応性の差が関与しているものと思われる。 2.VT_2による臓器障害におよぼす抗好中球抗体の影響 C57BL/6マウスにVT_2(1,10,30,50あるいは100ng)を腹腔内に投与してLD_<50>を求めた。ついで生食水あるいはVT_2100ngを腹腔内に投与し、投与前、投与24および48時間後の末梢血中好中球数を調べた。さらに、VT_2100ngを腹腔内に投与し、その直後および24時間後に生食水あるいは抗マウス好中球抗体(0.01あるいは0.1mg)を静注してマウスの死亡を観察した。その結果、LD_<50>は31.7ngであり、VT_2投与後経過とともに体重は減少し、ヘマクリット値および好中球数は増加した。抗マウス好中球抗体の投与により、VT_2投与によるマウスの死亡率は有意に減少した。以上より、VT_2投与によってマウスが死亡する機序に好中球が関与しているものと思われる。
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