研究概要 |
我々は、平成11年度本研究事業において手術により切除された肝臓試料の研究目的での有効利用に関する基礎的検討を目的とし、提供された手術材料の各部位での代表的CYP分子種活性、含量の検討を行い、手術に伴う種々の影響との関連性について精査した。本年度は、原発性肝癌5例、転移性肝癌3例の計8例について、各種CYP活性、含量を検討した。CYP各分子種の活性測定は、CYP1A2,2C9,2C19,2D6,2E1および3A4について検討した。対照として、HAB協議会より供給されたヒト肝プールドミクロソーム(HPM)を用いた。なお、本研究の実施には、昭和大学医学部医の倫理委員会の審査・承認を受け、提供者より文書によるインフォームド・コンセントを得た。 肝細胞癌試料(HCC)では、1A2活性が辺縁部で正常部より約20%の低下、腫瘍部位では、正常部位の約40%の活性を示した。また、2C9、2D6、2E1、および3A4においては、正常部位と比較して腫瘍辺縁部で各分子種とも平均で約10%の低下が示された。一方、転移性肝癌試料(Meta)では、1A2は正常部位と腫瘍辺縁部でほぼ同等の活性を示したが、2C9、2C19で約20%の低下、2D6、および3A4では約40%の活性低下が認められた。さらに、HPMとの活性比較では、HCCでは正常部位での比較においてCYP1A2、2D6でほぼ同等の活性が示されたが、2E1で約40%の低下、3A4では約50%の低下が示された。更に2C19においては活性の著しい低下が示され、その残存活性はHPMの約10%程度であった。一方、Metaでは、1A2、2C9、2C19、2E1ではHCCとほぼ同様の活性を示したが、3A4の活性低下は若干軽度であった。一方、2D6の活性はむしろ上昇し、HPMの約4倍の高値が認められた。HCCはMetaと比較し、若干活性低下が著しい可能性が示された。
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