ガングリオシドは神経細胞膜にあって、神経栄養因子の作用を修飾することが近年報告されている。我々は既に毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor : CNTF)が運動神経様細胞株NSC-34の無血清下での生存を延長すること、また外から加えたガングリオシドGM2がその作用を増強することを報告した。さらにCNTFとともに培養するとGM2合成酵素活性も増加した。今回はこのCNTFによる生存延長作用がGM2とCNTF受容体の共同作用によるものであるかどうかについて検討した。CNTFの存在下であっても抗CNTF受容体抗体を加えるとNSC-34細胞は細胞死を起こし、GM2合成酵素の発現は抑制された。この効果はGM2を加えることによって打ち消された。放射性ラベルしたCNTFはNSC-34細胞上のCNTFの結合を特異的に検出する。この系においてスキャッチャード解析を行ったところ、GM2はCNTFの結合親和性を5倍高め、結合部位の数は変化させなかった。また放射性ラベルしたN-アセチルガラクトサミンをNSC-34細胞に取り込ませた後細胞ライゼートを抗CNTF抗体を用いて免疫沈降した。その結果、生合成されたGM2がCNTF受容体の免疫沈降物を増やすことが明らかとなった。これらの発見はGM2合成酵素の発現を高めることによってCNTF受容体の機能的な活性化が起こりCNTFとの結合性が高まることを示している。このように、GM2は運動神経におけるCNTF受容体分子の調節因子であると考えられる。
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