本研究は飲酒時の心拍数増加作用がアセトアルデヒドによる心臓洞房結節ペースメーカー細胞を直接活性化して発現するとの仮説を基に、飲酒時における心拍数の増加作用とアセトアルデヒドの影響を明らかにすることを目的とした。アセトアルデヒドは交感神経終末からカテコールアミンの遊離を起こすことが知られている。飲酒時にはしばしば心拍数の増加がみられるが、この作用はアルコールの中枢神経作用か、アセトアルデヒドのカテコールアミン遊離作用か明らかでない。イヌの洞房結節単一細胞標本を用い、パッチクランプ法によりペースメーカー細胞の自動能に大きな役割を持つと考えるIf チャネル、T-typeCa^<2+>チャネルを計測し、さらにFura-2を用いて細胞内Ca^<2+>濃度を測定しアセトアルデヒドの影響を検討した。アセトアルデヒドはIfチャネルには影響を及ぼさず、T-typeCa^<2+>チャネルを有意に活性化させた。一方、細胞内Ca^<2+>濃度に対してもアセトアルデヒドは明らかな影響を示さなかった。現在ペースメーカのメカニズムは不明であるが、以上の結果より飲酒時における心拍数の増加はT-typeCa^<2+>チャネルの活性化が役割を果たしているものと結論した。次年度はNa/Ca Exchange currentsに対する影響を検討したい。
|