昨年度に続き、プロテアーゼ受容体(PAR)の消化器系における生理的役割について検討した。 はじめに、PAR-1を介するラット十二指腸運動調節の細胞内情報伝達機構をin vitroにおいて検討した。その結果、PAR-1を介する収縮反応はナトリウムチャネルの開口とそれに続く電位依存性L型カルシウムチャネル開口に依存することが示唆された。また、蛋白キナーゼC、チロシンキナーゼ、PI3'キナーゼは、PAR-1を介する収縮・弛緩のいずれの反応にも関与することが明らかとなった。 次いで、PAR-1およびPAR-2活性化によるin vivoでの胃腸運動の変化を、炭末輸送能を指標として検討し、両受容体の活性化により胃腸輸送能が亢進することを見出した。また、これらの作用は、L型カルシウムチャネルの活性化に大きく依存すると同時に、アパミン感受性カリウムチャネルの活性化により潜在的に抑制されていることが明らかとなった。 最後に、PAR-2を介する唾液腺および膵臓アミラーゼの分泌機構を検討し、この反応にNOが関与することを見出した。
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