遺伝子組換え型HBc抗原とインフルエンザワクチンとして近年注目を浴びている水溶性ペプチドのHA抗原に着目した。HA1抗原の変異部位137-147残基を含む領域Aと領域Bの半分をカバーするペプチドを対象とし、さらにヘルパーT細胞(Th)に抗原の提示ができるエピトープ(120-139)も含めて35残基(120-154)のペプチドを合成してモデル抗原とした。研究代表者は上記2種の抗原について浸透圧を利用したW/O/W型複合エマルション溶媒留去法により、組換え型ヒトB型肝炎コア抗原粒子(以下HBc抗原と略)をモデル抗原として、生体分解性のポリ乳酸グリコール酸共重合体(以下PLGAと略)中に高封入率・高収率で封入することを試みた。従来のカプセル化法ではHBc抗原は分子量360万の水溶性巨大分子であり、マイクロスフェアー化の際に使用される塩化メチレンなどの接触により瞬時に失活した。HBc抗原を安定にマイクロカプセル化できるものをスクニーニングしたところ、分子量数万〜10数万の分子量を持ったゼラチンが特に安定化効果が優れていることが分かった。一方、35塩基のペプチド(FISEG FTWTG VTQNG GSNAC KRGPD SGFFS RLNWL)を純度85.0%で合成した〔下記参照〕。なお分子量はmass spectrometryで測定の結果3838.8であった。合成ペプチドは、200μg/mlの高濃度では37℃、20時間でも70%安定であるが、50μg/ml以下の濃度では37℃、3時間振とうによりほとんど分解した。合成ペプチドに、添加剤(グリセリン、蔗糖、ゼラチン)を入れて、ペプチドの安定性を調べた結果、10%グリセリンを加えることで、安定化した。また合成ペプチドに還元剤(チオグリコール酸、還元型グルタチオン)を加えて、ペプチドの安定性実験を行ったところ、100mMチオグリコール酸の添加によってペプチドの分解を抑制することができた。 合成ペプチドに100mMチオグルコール酸とCFAを一緒に、BalbCマウスに皮下投与してそのin vivo評価を行った結果、ペプチド+CFAに比べて、やや抗体価の上昇が見られた。プロテアーゼの影響を受けている可能性が示唆されたため、さらに合成のプロテアーゼ基質である、N-benzoyl-dl-arg-4一nitroanilideを対象にした検討も併せて行った。
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