抗体は多岐にわたる標的抗原に対して高い特異性と親和力を示すため、臨床化学分析における機能性器材として利用価値が高い。しかし、天然の抗体には分子量が大きいこと(約15万)に起因する種々の制約があるうえ、十分な特異性・親和力を示さない場合も少なくない。そこで、抗体工学の技術により天然型抗体の構造と機能を改変して、超高感度・高選択的な臨床化学分析システムの確立に有用な低分子量の抗体模倣ペプチド(ミニ抗体)の創製を企てた。その一環として、副腎皮質ステロイドである11-デオキシコルチゾール(11-DC)及び光学活性なβ遮断薬である(IR)-ブフラロール(BUF)をモデル抗原に取り上げ、抗体H鎖及びL鎖の可変部(V_H、V_L)をリンカーペプチドで連結した一本鎖Fvフラグメント(scFv;分子量約2.5万)の調製を検討した。本年度、抗BUF抗体scFvの結合特性をELISAで調べたところ、由来するMabの約1/2(Ka=6×10^8M^<-1>)の親和力を保有することが判明した。また、IR配置をもつBUF及びその代謝物に群特異性を示す反面、IS配置の化合物との反応性は低く[(IS)-BUFとの交差反応性1.0%]、Mabとほぼ同様のエナンチオ選択性が認められた。現在、これらscFvの相補性決定部のアミノ酸配列を基盤とした、更に低分子量の分子認識モデュールの創製を検討している。
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