研究概要 |
今回、予算の申請額よりも配分額が減額のため、申請の蛍光分光光度計の購入を断念し、同じ目的のオプティカル生検の試みのため、フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-410M型,日本分光(株))を購入させて頂いた。本計測機能を活かして、申請当初の研究実施計画(平成11年度)を達成すべく、まず購入のフーリエ変換赤外分光光度計による実験腫瘍組織と実験変形性関節症のサンプルの計測から出発し、以下に示す具体的実験を行ない、新たな研究成果を得た。 (1)C3H/HeNマウスの背部に移植継代した扁平上皮癌squamous cell carcinoma(SCC)をサンプリングした凍結薄切切片(4μm)をBaF2の専用サンプルプレート上に伸せ、コレステロールのC-H結合の振動構造(2926cm^<-1>)やエステル結合C=O振動構造(1743cm^<-1>)、および蛋白質のアミド結合(アミド-I: 1653; アミド-II: 1542cm^<-1>)とN-H振動構造(3295cm^<-1>)の成長域に注目して、腫瘍特有の成分を検索した。その結果、腫瘍組織内にはコレステロールの沈着が、特に中心壊死に多く含まれ蛋白質の変性を来していることが新しく判明した。 (2)変形性関節症(OA)における骨炎や石灰化現象を構造生物学的に検討するために、OAのモルモットモデルの軟骨組織の凍結薄切切片(4μm)を作製し、上記と同じようにフーリエ変換赤外線分光光度計にて計測して、リン酸の吸収域(850-900cm^<-1>,900-1200cm^<-1>)に着目してスペクトル内の各構造成分比を求めるためにcurve-fittingを行なった。その結果、OA changeが骨のリン酸結晶性の分子構造学的もろさを反映していることが判明した。 ただ今回の研究は追加採択分の交付によりものであり、機器の実質的納入も平成12年2月と限定された期間で遂行されたことを付記いたします。
|