研究課題/領域番号 |
11672296
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 高明 名古屋大学, 医学部, 教授 (80198720)
|
研究分担者 |
北市 清幸 名古屋大学, 医学部, 助手 (40301220)
高木 健次 名古屋大学, 医学部, 助教授 (80126870)
|
キーワード | エンドトキシン / サイトカイン / 一酸化窒素 / 生体膜輸送機構 / P糖蛋白 |
研究概要 |
我々はエンドトキシンの薬物体内動態に及ぼす影響について検討を行い、ラットにおいてエンドトキシンが腎障害を誘発することにより有機アニオン性薬物の尿細管分泌を低下させること、有機アニオン性薬物の胆汁排泄を著しく低下させること、エンドトキシンによって産生される過剰の一酸化窒素(NO)が肝薬物代謝酵素活性を低下させる主な要因であることを明らかにした。 そこで本研究では、生体における解毒機構として重要な役割を果たす薬物膜輸送担体P糖蛋白に着目し、このP糖蛋白介在性の胆汁排泄および腎排泄機構に及ぼすエンドトキシンとエンドトキシンによって過剰に産生されるNOとサイトカイン(TNF-α)の影響についてin vivoにて検討した。モデル薬物にはP糖蛋白の基質であるローダミン123(ローダミン)を用いた。その結果、エンドトキシンはローダミンのP糖蛋白介在性の胆汁排泄および腎排泄を時間依存的に低下させることが明らかとなった。この低下に対するTNF-αおよびNOの関与について検討した。その結果、TNF-α産生阻害薬(ペントキシフィリン)を前投与することにより、この低下を抑制したが、誘導型NO合成酵素(iNOS)阻害薬の前投与では抑制できなかった。この結果はエンドトキシンによるP糖蛋白介在性の薬物排泄機構の障害にはエンドトキシンによって過剰産生されるTNF-αが一部関与することを示唆する成績である。次に、肝臓及び腎臓におけるP糖蛋白のmRNA、特にmdr1aおよびmdr1bの発現に及ぼすエンドトキシンの影響について検討した。エンドトキシンはローダミンの輸送蛋白であるP糖蛋白の遺伝子mdr1aのmRNA発現を時間依存的に低下させることが明らかになった。この結果はin vivoにおける成績と良く一致した。本研究より、エンドトキシン血症時においてはエンドトキシンによって過剰に産生されるTNF-αが時間依存的にP糖蛋白の発現を低下させることによりP糖蛋白介在性の薬物排泄機構を変化させることが示唆された。また、エンドトキシン血症時においてサイトカインが生体膜輸送機構を変化させることが明らかになった。
|