研究概要 |
キャピラリー電気泳動法を用いた迅速かつ簡便な臨床検査の分析法(蛋白、アイソエンザイム、感染症)の開発を目的に研究を行った。感染症検査項目であるHBs抗原測定法は抗体の選択、電解液の選択、印加電圧の変化による試料分子の構造変化、分析パソコンソフトの開発などの研究を経て、分析至適条件を確立した。測定装置はベックマン・コールター株式会社パラゴンPASE System2000およびレーザーモジュール488、キャピラリーカラムは75umX20cm溶融化シリカカラムを用い患者血清を蒸留水で50倍に希釈した試料または標準血清(極東製薬cat.No.58006)10μLに抗HBs抗原モノクローナル抗体10μL(50μg)日本バイオテスト研究所cat.No.303-06801),FITC抗マウスIgG抗体50μL(150μg)(和光純薬工業株式会社、cat..No.012-17531抗HBs抗原モノクローナル抗体(マウス)感作ラテックス懸濁液(極東製薬cat.No58005)10μL,ウシ血清アルブミン含有リン酸緩衝液10μLを加え混和したものを試料とし、窒素圧下2秒間(約5nL)試料をカャピラリーカラムに注入し、電解液は100mmol/Lホウ酸緩衝液pH10.04を用い10kVを印加し、ピークを蛍光検出した(励起波長480nm/蛍光波長520nm)。本法ではHBs抗原陰性者は抗原抗体反応生成物のピークが検出されず、陽性者および標準血清では10分前後に2本のピークが観察された。また、相対評価に用いたアキシム法(ダイナボット株式会社)と本法のピークエリアは良好な相関を示したが(r=0.94)、標準血清の表示値とアキシム法の値との相関係数は良好(r=0.90)ではあるが、低値領域で乖離が認められた。本法の分析再現性はCV2%以下と良好であった。一般的な共存物質の干渉も認められず、本法はHBs抗原測定法の一法として有用なものと考えられる。さらに、現在、本法による他の感染症マーカーの分析法の開発や脂質分析法の研究を継続している。
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