研究概要 |
本年度の研究はおおむね計画どおりに遂行され、応分の成果を得た。 1)P1の動態変化のメカニズムを遺伝子レベルで究明して新しい病態検査上の意義を確立することを目的に、P1構造遺伝子上の一塩基変異多型(SNP、スニツプ;Single Nucleotide Polymorphism)をdirect sequence法にて検索した。転写開始点より908 base pair上流の部位(C.-908),intron1内(U.1225),intron 2内(U.4777)の三個所に新たなSNPを同定した。C.-908多型は従来報告されているG38A多型と軽度の相関が認められるが、U.1225多型、U.4777多型はG38A多型と相関せず、新たなマーカーとして期待できる。2)P1はトロンビンによる血小板抑制作用を持つことが知られている。我々は他のアゴニスト、TxA2やATPase阻害剤Thapsigarginによる凝集をも同様に阻害することを確認した。血小板凝集の際に動員される細胞内カルシウムを同時測定した結果、P1は細胞外カルシウムの流入を抑制することが判明した。3)尿中β2-マイクログロブリンは、酸性尿中で不安定で変性する。この機序として、尿中に混在するcathepsin Dが分解作用するすることを発見した。プロテイン1が尿中で高い安定性を保たれるのは、一次構造上切断部位がないことによる。4)サルコイドーシス退行においては、血清、肺胞洗浄液中のP1濃度は増加する。P1はinterferon γの産生抑制を有し、Th1細胞の機能制御に関連して抗炎症作用に働いている可能性もある。
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