研究概要 |
インスリン依存型糖尿病(IDDM)の発症予知を目的としたマススクリーニング法を開発する目的で研究を行い,下記の成績を得た. 1.IDDM発症の環境因子とされる牛乳タンパク質抗原に対するIgA抗体応答を超高感度に測定する申請者独自の酵素免疫測定法(免疫複合体転移酵素免疫測定法)を開発した. 2.1の方法で発症直後のIDDM患者の血清中IgA抗体応答を測定したが,健康人との差は見られなかった. 3.この成績は,抗イディオタイプ抗体が抗体価の測定を妨害していたためであることを明らかとした. 4.抗イディオタイプ抗体の妨害が軽減できる測定法を開発した.これを用いて再測定した結果,患者では,牛乳タンパク質抗原のみならず,食物抗原一般にIgA抗体応答が亢進していることが明らかとなった. 5.IDDM患者の血清中サイトカインレベル(IL-2,IL-4)を測定したが,TH2優位の応答は見られなかった 6.IgA抗体応答の亢進はグルタミン酸脱炭酸酵素自己抗体,サイログロブリン自己抗体,甲状腺ペルオキシダーゼ自己抗体などが関わるIDDMの自己免疫性とは関連せず,TGF-βおよび疾患感受性HLA-DQ-DRハプロタイプに依存していることが明らかとなった. 以上のように,患者では食物抗原に対するIgA抗体応答が一般に亢進状態にあり,これを免疫学レベルおよび遺伝子レベルでサポートする成績を得た.これらのことから,食物抗原に対する尿中のIgA抗体応答を調べる発症予知法の病因論的な確度が明らかとなった.
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