研究概要 |
レチノイド応答性の検出系の確立及びレチノイド抵抗性の究明のため、まず11年度は、ATL細胞株において3種のレチノイン酸(RA)異性体の細胞増殖抑制作用とその機序の解析を試みた。IL-2依存性ATL細胞株(KK1)の培養液中に10^<-6>MRA(ATRA,9-cis-RA,13-cis-RA)を添加した。DNAの断片化はFACSにて測定した。細胞周期及びアポトーシス関連タンパク質はWestern blotにより検出し、caspaseの活性は蛍光基質を用いて測定した。3種のRAはいずれもATL細胞株のG1期停止及びアポトーシスを誘導した。この時、Bcl-2、Baxおよびcaspase-1の活性には変化が見られなかったが、Bcl-xの減少とcaspase-3、-6の活性化が認められた。12年度には、IL-2依存性ATL細胞のIL-2除去により誘導される増殖抑制及びアポトーシスとRAにより誘導される場合との相違について検討した。IL-2依存性ATL細胞株をIL-2非添加の培地中にて培養後、上記と同様にして検討を行った。本ATL細胞はIL-2非添加での培養時間とともにG1期停止がみられ、その後アポトーシスが誘導された。G1期停止にともないRAにより誘導されたCDKインヒビターp21(Waf1/Cip1)ではなくp27(Kip1)が増加していた。Rbタンパクについては、リン酸化の低下がみられたが、さらに時間とともに量的な減少がみられた。このときCaspase-3が活性化されており、この量的減少にはCaspaseの活性化の関与が示唆された。さらに現在、ATL細胞の細胞死に関する知見をもとに、合成レチノイドを用いて、それらの有用性を検討しているほか、今後、患者末梢血からのATL細胞の分離及びそれを用いた解析を中心に行う予定である。
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