研究概要 |
本学付属病院において院内感染の流行が終息していない5つの診療科の患者由来の材料並びに医療従事者の手指および鼻腔から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を対象に,遺伝学的および細菌学的な性状の解析を行うと共に,それらのMRSAが分離された疫学的背景を調べ,以下の成績を得た. 1.MRSAによる院内感染が本院の複数の診療科で発生している. 2.医療従事者の手指や鼻腔内に存在するMRSAと同一の株が患者からも分離されている. 3.同一株が分離された多くの事例で,医療従事者と患者および患者と患者が接触していた事実がある. 4.MRSA分離株の中には,多くの患者に伝播した流行株と1〜2人の患者からしか分離されていない非流行株が存在する. 5.転病棟や集中治療室への入室歴を有する患者から流行株が分離される傾向がある. 6.非流行株に比べ流行株の方が腸管毒素とTSST-1の産生能が高い傾向がある. 7.本院で汎用されている消毒剤や抗生物質に抵抗性のMRSAだけが流行しているわけではない.
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