本研究は65歳以上の大腿骨頸部骨折患者と慢性的な障害を有する非骨折患者の退院後の身体活動性(ADL、IADL)と、生活充足感(QOL)を測定し、両群の違いを検討することにより、高齢骨折患者の有効な退院指針を立案することである。 調査対象は、療養型病床を有する病院を退院した65歳以上の大腿骨頸部骨折75名と、慢性的な障害を有する非骨折患者75名の150名である。このうち、訪問拒否や死亡、施設入所などを除外した骨折群56名、非骨折群57名の113名を分析対象とした。調査は自記式調査票を家族または本人に郵送し、返送後未記入や内容不整合箇所については、保健婦または看護婦が電話及び訪問して、確認した。調査内容は、現在のADL、入院前と退院後のIADL、社会参加状況、退院後の転倒歴、PGCモラールスケール(以下PGCスコア)によるQOLなどである。対象者には、郵送により本調査の目的や効果など詳細な説明を行い、全員から承諾を得た。 平均年齢は骨折群81.0±7.2歳、非骨折群74.2±6.3歳で、骨折群の年齢が有意に高かった。2群別にみた入院前と現在の老研式活動能力指標(IADL)は入院前では差がなかったが、現在のIADLは合計点、手段的自立、知的能動性、社会的役割のいずれも骨折群が非骨折群に比べ、有意に低かった(p<0.01)。QOLを示すPGCスコアは2群別に差はなかったが、友人との交流は骨折群が非骨折群に比べて有意に低かった(p<0.05)。以上のことから、骨折後は低身体活動性、手段的自立が低いこと、友人との交流が少ないこと等が示され、これらの内容を退院指導に組み入れていくことの必要性が示唆された。
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