研究概要 |
【研究目的】看護診断において意思決定にかかわる認識能力の発達過程を看護実務経験年数と推論の構成要素との関係から明らかにする。 【研究方法と手順】発話思考法(Talk aloud)を用いた。被験者に3種の尺度事例を提示して得られた発話思考内容をすべて録音して逐語録に転記し、Narayan & Corcoran-Perryのプロトコル分析枠組みを用いてLine-Of-Reasoning(LOR)の構成要素を抽出し、ANOVAを用いて看護実務経験年数間の差をみた。 【被験者】総合病院で看護の実務に就いているナースのうち、研究目的に賛同し協力を承諾した看護実務経験1年未満(n=10)、2年未満(n=10)、3年未満(n=9)の者合計29名。 【結果】LORの6構成要素(A=Argument,T=Triggering cues,D=Domain concept,IC=Intermediate Conclusion,IA=Intermediate Action,C=Conclusion)のうち看護実務経験年数間で有意差がみられたのは、A(F(2,84)=4.14,P<.05),T(F(2,84)=7.8,P<.01),D(F(2,84)=6.37,P<.01),IC(F(2,84)=6.05,P<.01)の4構成要素であった。多重比較の結果AとTは2年未満群が3年未満群よりも、またDとICは2年未満群が1年未満群ならびに3年未満群と比べて有意に高かった。看護実務経験年数間で有意差がみられなかったIAとCについて出現頻度の平均値をみると、IAでは1年未満群がもっとも高く、経験年数が増加するにつれて低くなっていたが、Cでは1年未満群がもっとも低く、看護実務経験年数が増加するにつれて高くなっていた。 【まとめ】本研究の結果からは、看護実務経験3年未満の新人ナース段階では、看護診断において意思決定にかかわる能力が看護実務経験年数に応じて直線的に発達するとはいえない。
|