本研究の目的は、看護職者の生涯学習を支援するシステムを、看護職者が労働ないし生活をおくる拠点である地域において構築するための基礎資料を得ることである。看護職者がおかれている現状を把握するために、最近5年間に2県の看護協会が主催した看護管理者研修(ファーストレベル)プログラム受講者全員(T県265人、K県277人)を対象とした質問紙調査と一部追加の聞き取り調査を実施した。回収率はT県65.3%、K県72.9%であり2県の結果を集計した。その結果と先行研究から学習の実態や学習を阻害する要因等を把握し、学習支援システム構築への問題点と課題を明確化した。 調査結果からは、看護職者は専門的な知識や技術を更新する必要から、多様な学習機会にアクセスし学習する意欲を強くもっているが、それを阻害する要因として仕事や家事の忙しさ、身近に施設や学習機会の場がないこと、家族や職場の理解のなさなどを指摘していた。また、学習情報や学習相談など、学習を支援するシステムの活用が十分できないこともあげられていた。受講者は学習成果を高く認知しているものの、職場においては昇給や昇任などの面で成果の活用は全く効果がなかったとする者が多い結果であった。今後、看護職者の生涯学習支援システムを構築するには、研修の入力と出力両面からのシステムの整備の不十分さや学習を支援するシステムの未整備、学習を側面より支援する学習相談事業の活用についてのPRの不足などの現状が明らかとなった。これからは、職場において学習を継続しやすい制度の導入や、学習成果の評価システムについての早急な検討を必要としており、これらの問題点や課題をふまえ組織的・系統的な生涯学習支援システムを看護職者の起居する地域において構築することの必要性が示唆された。
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