研究概要 |
平成12年度は母親と子供における夜間覚醒の関連性に注目して,分析を行った。妊娠33週頃より,分娩後15週間に初産婦14名、経産婦12名、計26名(平均年齢29.0±3.5才)に,日々の睡眠日誌を速続記入してもらい、このうち協力の得られた8名の母親には乳児の睡眠日誌も毎日記入してもらった。乳児の睡眠日誌から、初・経産婦別の睡眠・覚醒行動の特徴および、母・児における睡眠覚醒行動の同期性を検討した。延べ3,801日、乳児は延べ760日の有効データが得られた。母親の睡眠・覚醒行動は、初・経産婦群と妊娠・出産後経過週(経過週)を独立変数に、また乳児の睡眠・覚醒行動は、母子および出産後の経過週をそれぞれ独立変数とした、2元配置分散分析とNewman-Keulsのpost Hoc testを行た。8組の母親とその乳児における夜間の覚醒時間と覚醒回数の平均および標準偏差を、それぞれ産後経過週ないしは週齢別にみると,母親と乳児の覚醒時間と覚醒回数は、いずれも産後1週目から14週目にかけて暫時減少する傾向あり、母親の覚醒時間については、どの週にあっても乳児よりもやや多い傾向がみられた(F=3.54.df=1.182.p<0.081)。乳児によって夜間に母親が起こされる内容は、平均で授乳が約75%、おむつ交換が15%、夜泣きが4%、その他の理由が6%。全ての週における夜間の覚醒時間と覚醒回数における母親と子供の関連性は、いずれも強い相関関係が認められた。 母親の,入眠状態および熟眠感が「あまりよくなかった」、「全然よくなかった」と回答した者の比率は、いずれも産後1週目が最も高く、その後ほぼ産後8週目にかけて急激に減少し、これらの比率は、妊娠中でも比較的高い比率を示していたのが特徴であった。産後1週から11週までは、妊娠末期に比して夜間の全睡眠時間の有意な短縮と入眠後の覚醒時間の有意な増加を示し,睡眠効率は、産後1週から8週まで有意に減少していた。特に、初産婦群の産後2週から6週にかけては、覚醒時間の増加と睡眠効率の減少が大きかった。以上の結果から、母親の夜間睡眠の乱れは、とくに初産婦群で大きく、産後11週頃までその乱れは持続するが、彼女らの乳児の睡眠・覚醒リズムもしくは授乳リズムの発達とともに、12週以降に母親の睡眠・覚醒リズムもほぼ正常なパターンに復帰していくものと推測された。
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