研究課題
1.在宅要介護高齢者虐待の発生要因に関する事例・対照調査(全国調査)【方法】対象は平成8年に実施した在宅要介護高齢者虐待事例250人(ケース群)と、ケース群の性、年齢、地域の3項目をマッチングさせ、虐待は受けていない事例(対照群)。調査方法は郵送法によるアンケート調査で担当の保健福祉職に記入を依頼。【結果】回答があったのは109人(回収率42.4%)であり、そのうち継続支援中の事例は18人(16.5%)であった。関わりがなくなった主な理由は入院・入所40人、死亡35人、他機関紹介6人、介入拒否2人であり、虐待の解消による終結はわずかに1人のみであった。なお、入院・入所事例のうち5人は入院・入所後死亡しており、死亡事例40人中2人は死亡原因に虐待の関連があり、継続援助中の18人中6人は虐待の程度には変化がなく、援助の困難さを反映していた。有効であった援助内容は、虐待者の悩みや苦労等に傾聴し、受容するなどカウンセリング的援助が最も多く、次いで介護負担軽減のための直接的援助とサービス導入、事例検討会開催による総合的対策の検討等であった。2.在宅要介護高齢者虐待の発生要因に関する事例・対照調査(大阪府下調査)【方法】対象は大阪府下の訪問看護ステーション等で平成10年度中に関わった高齢者虐待事例(ケース群)と、同一機関で把握され、ケース群の性・年齢をマッチングさせた虐待のない事例。調査方法は担当看護職が調査用紙を用いて介護者に訪問面接調査。【結果】ケース群、対照群のそれぞれのデータが得られたのは各々73人、合計146人であった。両群間に有意差を認めた項目は痴呆、重介護状態、ストレス、性格の偏り・精神障害、経済的困窮、家族親戚の無理解・協力がない等であった。判別分析で虐待と関連が大であったのは高齢者と介護者の人間関係であった。次年度は事例検討会による介入の分析を行う。